こんにちは、タカヒロです。
そうした疑問に答えていきます!
英語教育の現場では「コミュニケーション能力の育成」ということが謳われ続けています。
実際にどの年代の授業も「コミュニカティブにしていかなければいけないよね」と議論されています。
なんだかこれまでの「受験英語」「文法重視指導」に対抗するものとして「コミュニケーション」が捉えられているようにも感じます。
しかし、果たして「コミュニケーション能力」とは何なのでしょうか?
そこでこの記事では、学者による定義を元に「コミュニケーション能力」を分析していきます。
Contents
英語教育におけるコミュニケーション能力とは
英語教育においては「コミュニケーション能力(communicative competence)」は以下の4つの要素から構成されていると考えられています。(Canale, 1983)
・・・語彙や文単位の統語知識
②社会言語学的能力(sociolinguistic competence )
・・・その場の状況や相手に応じて適切な言語使用ができる能力
③談話能力 ( discourse competence )
・・・一文以上のまとまりのある談話を構成する能力
④方略能力 ( strategic competence )
・・・言語能力の欠如を補うストラテジーを使いこなす能力
①文法能力(grammatical competence)
文法能力とは、語彙や文法を使いこなす能力です。
知っている語句や文法が増えることで、表現できる幅は増えていきますよね。
授業でのコミュニケーション活動で、例えば「新出文法事項を使った活動」をするなら、それは「文法能力」に重点が置かれていることになります。
②社会言語学的能力(sociolinguistic competence )
社会言語学的能力とは、その場の状況や相手に応じて適切な言語使用ができる能力のことを言います。
例えば、相手がお昼ご飯を食べたのかを聞きたい時、
先輩・上司 ⇒ 「もうお昼ご飯食べられました?」
という具合に、相手との関係によって言葉を使い分けますよね。
英語では、例えば
・kidsは口語表現、フォーマルな場合にはchildを使う
など、状況によって使う英語が変わってきますね。
「レストランでオーダーする」「顧問の先生に今週の部活を休むことを伝える」など、ちょっとしたロールプレイのタスク活動を通して社会言語学的能力を鍛えていきたいですね。
③談話能力 ( discourse competence )
談話能力とは、一文以上のまとまりのある談話を構成する能力のことを言います。
手紙やエッセイを書く、スピーチやプレゼンをするといった際には談話能力が求められます。
日本語では主張を最後に持ってくる場合が多いのに対し、英語で表現する際には、「主張をトピックセンテンスとして最初に提示する」といったような違いに気付かせていきたい所です。
④方略能力 ( strategic competence )
方略能力とは、言語能力の欠如を補うストラテジーを使いこなす能力のことを言います。
この能力に長けていると、言いたいことが言えない時に、別の言葉で言い換えることができます。
例えば、detergent(洗剤)という単語を知らなくても、something for washing clothesと言えばおそらく伝わりますよね。
英語だけを使って何とか乗り越えていく訓練を積んでいくことで、方略能力が身についていきます。
授業のウォームアップとしてこんな活動がおススメです。
・ウォームアップで盛り上がる活動 word explaining game
一口に「コミュニケーション能力」と言っても4つの要素があり、教員側は授業の活動によってどの能力に焦点を当てているのかを考える必要があります。
「この活動を通して、コミュニケーション能力の内、談話脳力を伸ばそう」というように意識出来ると、活動の意義がはっきりして、より良い効果が期待できますね!
これらの4つの要素をバランスよく活動に取り入れていくようにしましょう。
なぜ「英語の授業」でコミュニケーション能力の育成なのか
次に、なぜ「英語の授業で」コミュニケーション能力を伸ばそうとしているのかを考えてみましょう。
なぜ国語の授業ではなく、英語の授業なのでしょうか。
まず、ちょっと大げさですが、コミュニケーションを取ることによって、「他人の視点から世界を見ること」ができます。
“ああ、そうゆう考え方があるか” “その考え方には賛成だな/賛成できないな”といったように、他人と話すことで、自分では気付けなかったことに気付くことができたり、自分の意見を再認識することができます。
もちろん、日本人と日本語でコミュニケーションを取ることも、考え方は十人十色なので大変な意義があります。
しかし、「文化を越えて」という観点から考えると、日本語は主に日本国内でしか使われていないため、ある程度の制限を受けてしまい、全く違う文化に接することはなかなか難しいです。
その一方、英語でコミュニケーションが取れれば、その制限からは大いに解放されて、世界中の異文化に触れあうことができるようになります。
すると、日本人ではあまりしない発想であったり、物事の捉え方の違いに触れることで出来ます。
必然的に、英語でコミュニケーションを取ることで、日本国内のみで触れる視点とは比べ物にならないくらい多くの視点から世界を見ることができます。
そのために、“英語で”コミュニケーション能力を高めていくことが必要なのでしょう。
応用言語学者の村野井仁教授は、自身の著書「第二言語習得研究から見た効果的な英語学習法・指導法」の中で、
異文化間コミュニケーションにとって最も障害となる偏狭なナショナリズムや特定のイデオロギーに飲み込まれずに、自分の頭で考え、判断する知性、全ての人間の大切やを認められる態度、そして異なる者同士が共生するために絶対的に必要な第二言語による対話を可能にするスキル、これらを育てることが教師の使命であり、英語教育で育てられることもこれからの知性、態度、そして技能なのではないだろうか。
第二言語習得研究から見た効果的な英語学習法・指導法 P181
と述べています。
今後の英語教育、より一層大切になっていく視点ですね。
まとめ
この記事では、英語教育におけるコミュニケーション能力についてご紹介しました。
生徒はそんな堅苦しいことは考えていません。
「なんで日本人が日本でコミュニケーション取るのに英語使わなきゃいけないんだ」と考えている生徒がほとんどです。
大事なことは、「なぜそれを英語でする必要があるのか」を、授業を通してしっかりと生徒に理解してもらうことなのだと思います。
引き続き、「英語でコミュニケーションが取れる生徒」を育てていきましょう!!