子どもの英語教育 第二言語習得論 英語教育

【臨界期仮説とは何か】英語のやり直しに遅すぎることはない理由

2020年5月11日

こんにちは、タカヒロです。

 

臨界期仮説って何? 英語学習にどう関わっているの?

 

そうした疑問にお応えしていきます。

 

 

第二言語の習得に関して、「学習開始年齢が習得の成否に影響を与える」という研究が、数多くされています。

その中でもよく「臨界期仮説」という定説が取り上げられます。

 

この記事では

・臨界期仮説とは何か

・英語学習にどのように関わっているのか

をご紹介していきます。

 

それではどうぞ。

 

臨界期仮説とは何か

 

臨界期仮説(Critical Period Hypothesis)とは、

言語の習得に関して「ある時期を過ぎてから言語習得始めても、新しい言語を完全に習得することは困難である」

ということが提唱されている仮説です。

 

「ある時期」とは12歳や9歳など、学者によってまちまちで、統一の見解は出されていません。

臨界期仮説は、もともと第一言語の習得に関して提唱されていましたが、第二言語を習得する際にも考えられるようになりました。

 

脳神経生物学的な研究から、

・脳の構造が特定の年齢までに変化し、その後は柔軟性を喪失してしまう

・母語を習得していくにつれて、言語処理のシステムが確立されていくため、第二言語を習得する際に母語がフィルターとなり、第二言語は不十分な習得しか達成できない

と発表している論文があります。

確かに感覚的にも、幼い時の方が頭が柔らかくて、細かい分析などせず自然に第二言語を習得できるようなイメージがあります。

 

この臨界期仮説の通りであれば、

・宇多田ヒカルの英語がネイティブ並みなのは、彼女が幼少期を海外で過ごしていて臨界期には英語を習得し始めていたから

・厚切りジェイソンの話す日本語が日本人からしたら若干違和感を感じるのは、彼が臨界期を過ぎてから日本語を勉強し始めたから

と説明することができます。

 

あくまで「仮説」ではありますが、言語を学ぶ上で、「子どもの脳」と「大人の脳」の性質に違いがあるということは言えそうです。

 

そうした臨界期仮説の影響もあり、現代では「幼いうちから英語をやらせなきゃ!」と幼稚園から英会話に通わせたり、「小学校での英語教育も前倒しにしなきゃ!」と議論したりすることに繋がっています。

 

臨界期仮説が英語学習にどのように関わっているのか

 

それでは、臨界期仮説をどのように受け止めて英語学習を進めていくべきなのでしょうか?

 

臨界期仮説のポイントは、「ある時期を過ぎて第二言語を始めても、ネイティブと同じ言語能力にはならない」という点です。

第二言語自体は臨界期を過ぎても十分習得することができます

 

子どもに適した学習と大人に適した学習

 

言語習得では「Older is faster, Younger is better」と言われており、若ければ、よりネイティブに近い言語能力を身に付けることができますが、大人になるにつれ、発展した認知能力を使って、短期的に素早く学習することができるとされています。

 

子どもはインプットした言葉をそのまま覚えるといった「暗示的学習(implicit learning」を得意とし、

大人は母語と比較するといった認知能力を使った「明示的学習(explicit learning)」を得意としている、と言われています。

 

小学校で「英語の音に慣れ親しむこと」に注力されているのは、子どもの方が無意識的に学習することに優れているからであり、

中学校から本格的な文法指導が始まるのは、中学生以上の方が、母国語と比較しながら学ぶことができる上、抽象的なことも理解しやすいためです。

 

「臨界期」の有無に関わらず、年齢に応じた学習を意識することが大切です。

子どもには子供の学び方があり、大人には大人の学び方があります。

大人になってから第二言語を学び始めても、十分国際的に通用する言語能力は手に入れることができます。

 

英語学習で何を優先するのか

 

「子どもにバイリンガルになって欲しい」と思うのであれば、幼少期を海外で過ごしたり、イマ-ジョン教育が行われている学校へ通わせて、大量のインプットを与えることが必要になってきます。

しかし、アメリカ人やイギリス人など英語ネイティブの人口よりも、第二言語として、もしくは外国語として英語を話す人口の割合の方が増えている現状を考えると、英語ネイティブと同じ言語能力を習得することは、それほどメリットにならないように思えます。

世界中で話されている英語の多くが、母国語によって影響を受けた英語だからです。

 

渡辺謙さんは日本語訛りの英語ですが、ハリウッドの第一線で活躍されています。

パックンや厚切りジェイソンの日本語が、多少イントネーションがおかしくても別に気にならない事と同じで、ネイティブ並みの発音で話すこと自体はあまり注目されず、それよりも、その人が何を話すのか、その言語を使って何をするのか、という方がよっぽど重要です。

 

 

まとめ:大切なことは身に付けた第二言語で何をするか

臨界期までに第二言語を始めなかったから手遅れ、ということはありません。

臨界期より大切なことは、身に付けた第二言語で何をするか、という点ではないでしょうか。

学習の目的を大切にして、学習時期に合った学習を継続していきましょう。

 

第二言語習得を研究する上ではこちらの書籍がおすすめです。

是非合わせてご覧ください。

【第二言語習得論】が良く分かるおすすめ本5冊+番外編3冊

続きを見る

最後までご覧いただきありがとうございました!

スポンサーリンク

-子どもの英語教育, 第二言語習得論, 英語教育

© 2024 TAKA blog