こんにちは、タカヒロです。
「働き方改革」が叫ばれるようになり、数年が経ちましたね。
そんな悩みを抱えている若手教員は多いのではないでしょうか。
今回は教員の今後の働き方について、僕の考えと今歩み出した道について書いてみたいと思います。
この記事の内容
・フリーランス教師という選択の可能性について
筆者の経歴
・公立中学教員6年
・休職してイギリス大学院へ留学(MA TESOL)
・県立高校教員2年
・退職して、今は私立大学・私立高校の非常勤講師
僕は高校生の頃から教員になりたくて、一目散に教員の道を選びました。
他の先生方と協力しながら、がむしゃらに働いて20代を過ごしてきました。
生徒と時間を共にすることは本当に楽しく、今でもやりがいを感じながら働いています。
しかしながら、やりがいを感じているのと同時に、
「果たして、このまま定年まで教員として働くことが良いのだろうか」
そんな疑問を心のどこかにずっと抱えていました。
様々な職業・働き方があるこの世の中で、どこか閉鎖的な学校現場にいることが、なんだかもどかしく感じる時もありました。
そうした思いがあり、休職して留学してみたり、中学から高校へ校種を変えたり、遂には退職して講師の道へと踏み出したりと自分なりに選択やチャレンジをしてきて今に至ります。
私と同じように、教員としての働き方に悩んでいる同年代は多いのではないでしょうか?
・やりがいのある「教える」ということは継続しつつ、自分の人生に後悔のないように生きたい。
・教員としての働き方を見直したい。
・教員志望だが、本当に教員になろうか悩んでいる。
そんな方々に読んでいただき、考えをシェア出来たら幸いです。
ひょっとしたら、教員としての働き方がガラッと変わっていく時代に突入していくのかもしれません。
Contents
【教員の新しい働き方】フリーランス教師という選択の可能性
結論としては、今後「フリーランスの教員」として働くという選択肢もありなのではないかと思います。
ここでのフリーランスの教員とは「非常勤として教壇に立つ」ことを意味しています。
2021年3月末で退職後、
今は
・私立大学講師(非常勤講師)
・私立高校教員(非常勤講師)
・英語コーチ
・英語教育系のwebライター
として働いています。
給料は教諭の時と比較すると減りましたが、自分の頑張りがそのまま自分に返ってくるようになりました。
そして何より、自分で使える時間が大幅に増えて、生活の充実度や幸福度は増しているように感じています。
詳しくはこちらの記事正規教員から非常勤講師になって感じたこと【非常勤の実態を解説】をご覧ください。
このような働き方の可能性について、
・教員の志願者数の減少
・世界の働き方の変化
・教員の働き方の現状
といった点を踏まえて紹介していきたいと思います。
教員の志願者数の減少
まず、教員の志願者数の変化を見てみたいと思います。
上の表は令和3年度(2021年度) 教員採用試験の倍率です。
( )内は昨年度(2020年度)の倍率を表しています。
残念ながら、関東圏においては特に小中学校の倍率が軒並み下がっています。
一斉定年退職の時期を迎えて、採用数が増えていることによって倍率が下がった、という見方も出来ます。
しかし、例えば埼玉県では、
といったように、志願者数自体が減少しています。
社会の働き方が変化していく中で、「教員はブラック」というイメージがどこかにはびこっている結果が出ていると言えるかもしれません。
倍率が低下すると、当然「教員の質」自体にも影響が出てきて、結果的に教育の質に関わってきます。
といった記事や意見が多く見られますが、私の個人的な見方は少し違います。
問題はもっと根本的な所にあって、
「教員として採用されれば生涯教員を勤める」という、教員の働き方自体が時代に合わなくなってきているのではないか?
と思います。
今後の時代を考えた時に、
・生涯教員として従事したい人
・生涯教員はやりたくないけれど、子どもたちに教えたいとは思っている人
こうした二つの層に分断され、上の層が減っていく一方、下の層が増えていくのではないかと思います。
これは教員として働いていて、肌感覚で感じることでもあります。
「子供と接することは好きですけど、教員はちょっと…」そんな意見をよく耳にします。
部活が嫌で教員を辞める、やることが多い上、やりたくない仕事もやることが嫌で教員を辞める。
残念ながらそのような先生も多いのが事実です。
そうした意見はどのような時代背景から来ているのでしょうか。
世界の働き方の変化
次に、世界の働き方の変化に目を向けたいと思います。
以前にも増して、「転職が当たり前」の時代になってきました。
「同じ会社で定年まで働き続ける」という従来の終身雇用制から、
「自分の能力をより高く評価してくれる会社への転職を繰り返して、キャリアアップして収入を増やしていく」
といった個人の価値に重点が置かれるようになってきました。
トヨタの社長さんが「終身雇用の維持は難しい」と語ったことも大きな話題になりました。
イギリスの経済学者リンダ・グラットンによるベストセラー『LIFE SHIFT』では、
・これまでの「教育、仕事、引退」という3ステージ型は終わり、生涯を通じて様々なキャリアを経験していくマルチステージ化していく。
・雇用の形は変化し、エクスプローラー(幅広い針路を検討する)、インディペンデント・プロデューサー(自由と柔軟性を重んじて小さなビジネスを起こす)、ポートフォリオワーカー(さまざまな仕事や活動に同時進行で携わる)といった人々が増えてくる。
・変身資産(人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させる意見と能力)を充実させていくことが重要になる。
といったことが述べられています。
さらに、橘玲さんは自身の著書「働き方2.0VS4.0」の中で
「終身雇用制度は『労働者を保護するために制度』ではなく、『労働者を奴隷化する制度』となる」と述べています。
1960年代の高度経済成長期は、働き手を確保したい経営者と生活を安定させたい労働者の利害が一致していたため、終身雇用制が機能しました。
若い時は給料が低くても、退職金を受け取りトータルの収入で帳尻が合うため、多くの人が「安定」を手にするために終身雇用を受け入れ、「正社員」になることがステータスのような形になっていきました。
しかし、そうした終身雇用が中心の時代は終わりを告げ、自分自身でキャリア構築していく時代に突入していくことは間違いありません。
橘玲さんは、働き方の変化を
働き方1.0 年功序列・終身雇用の日本的雇用慣行
働き方2.0 成果主義に基づいたグローバルスタンダード
働き方3.0 プロジェクト単位でスペシャリストが離合集散するシリコンバレー型
働き方4.0 フリーエージェント(ギグエコノミー)
と定義しています。
現状の日本は働き方1.0から2.0への変化が加速していますが、世界に目を向けると、3.0から4.0へと移行し始めています。
働き方4.0の「ギグ」とはもともとジャズミュージシャンなどがライブハウスで気の合った仲間と演奏することで、「短期の仕事」という意味で派生した言葉です。
組織に所属せず、フリーランスとして「自分のスキルに合った、自分の好きなことをやる」。そうした働き方に移り進んでいます。
雇用側の会社にとっては、
・フリーランスを多く雇うことにより、従業員の福利厚生費が大幅にカットできる。
・必要な人材をジャストインタイムで採用できる。
労働者側にとっても
・自分のスキルに合った仕事をすることができる。
・自分で自分のキャリアをコントロールできるようになる。
そういったように双方にとってメリットが大きいため、今後さらに働き方4.0への動きが加速していくことが予想されています。
そうした社会の大きな変化の中で、果たして「生涯教員として勤めたい」という人材が増加していくことはあるのでしょうか?
教員の働き方の現状
教員の働き方に戻り、その現状を見てみたいと思います。
政府は平成31年1月25日、「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」を打ち出しました。
このガイドラインは残業時間の上限の目安を「月45時間、年間360時間」と定めました。
なお、児童生徒の特別な事情によって勤務せざるを得ない場合にも年間の残業時間が720時間を超えないことや、1か月あたりの残業時間が45時間を超える月は1年間に6か月までといったことも定められました。
実際に、私が勤めていた公立高校でもタイムカードが導入され、「月45時間の残業に抑えるように」と管理職によって努力目標が掲げられました。
確かにそうした上からの指示により、効率よく業務をこなし、早く帰ることを意識し始めている教員は増えてきているように思います。
しかしそうした教員の働き方改革の現状は、「長時間労働の規制」という所に留まっていて、世界における「働き方自体の変化」には程遠いように思います。
正直、働き方1.0から脱出することすら出来ていません。
何かもっと根本的に、教員の違った働き方が現れてきても良いのではないかと思います。
教員の働き方4.0へ向けて
時代の変化に合わせて、教員のあるべき姿も変化させていくべきなのではないでしょうか。
働き方4.0へと移行していく時代の中で、「生涯教員として従事すること」が、教員を目指す生徒たちに魅力的に映らなくなっていく恐れがあります。
今後の時代を考えた際に、
・その人自身が自由に能力を発揮して働いている。
・知識の教授だけでなく、その人の行動や考え方自体が魅力的に映る。
・時代の変化を捉えて、その観点を教育現場で伝えられる。
そのような人が、生徒・学生が目指したいと思える「教員の姿」になっていくのでないかと思います。
ドイツの哲学者ニーチェは、「精神も新陳代謝してこそ生きられる」と生きるヒントを残しています。
初めの教員採用試験の話に戻りますが、「正規の教員」として働きたい人材を増やすことが時代の流れに合っているとはあまり思えません。
今後は、「組織に所属しない働き方」の一つとして、フリーランス的な教員がもっと台頭してきてもよいのではないかと思います。
生涯教員として働くことを否定するつもりは一切ありません。
教育現場に従事することでしか出来ないことは多くあります。
しかし、担任を持ち、部活を持ち、常に生徒のそばで成長を見守るこれまで通りの教員と、働き方4.0的な視点を持ってフリーランス的に働く教員がタッグを組んで教壇に立てば、教室に新たな風を吹き込むことができると思います。
学校に「~しながら、先生をしています。」という先生が加われば、
生徒に「あ、そんな働き方もあるんだ」と気付かせるきっかけになります。
「複数の学校や職をまたにかけて『自分の専門スキル』を生徒に伝えることが出来る。」
そんな働き方の指針を学生に示すことが、時代のニーズを捉えて、結果的に将来の教員志願者を増やすことに繋がっていくのではないかと思います。
まとめ
IT技術の発達を始め、目まぐるしく変化する時代の中で、教員としての働き方自体も考えを新陳代謝させ、変身させていくべきなのではないかと思います。
まだまだ私も自分自身を使った実験中の身ですが、教員不足の問題に、良い意味で一石を投じる存在になりたい。そう考えています。
教育が子供たちの未来の可能性を引き出していくということは紛れもない事実です。
その教育を担う教員の働き方に関して、もっと幅広く考えていかなくてはならないと思います。
こちらの書籍が考えるきっかけをたくさん与えてくれるので、一読の価値ありです!
最後までお読みいただきありがとうございました!
ではまた!